データガバナンス研究会

データガバナンス研究会

 デジタル社会実現の重要な要素の一つが、(デジタル)データです。例えば、デジタル庁も、「我が国における社会課題解決や国際競争力を維持・向上させるため、多様で質が高く十分な量のデータを簡単かつ安全に信頼して活用できる環境の実現」を強調しています。*
※デジタル庁「データ戦略の推進」https://www.digital.go.jp/policies/data_strategy/
 自由なデータ流通により従来にないビジネスが勃興し、消費者が新たなサービスの利便性を享受できるようになる一方で、多様な個人データを大量に集めてビジネスに活用することで収益を上げる大規模プラットフォーマーが消費者に不利益をもたらしているのではないかとの懸念も指摘されています。
 具体的には、電子商取引を営む大規模プラットフォーマーが、消費者個人による商品・サービス購買履歴やサイトの閲覧・クリック履歴から、当該消費者の属性(年齢、性別、趣味・嗜好)や行動パターンを分析し(いわゆる「プロファイリング」)、それに基づき対象セグメントを特定し、マーケティングに活用する例があります。これは、消費者の個人データを保有する者が、消費者に利便性を提供しつつ消費者の権利・利益を損なわないよう、適切に利活用するためのルールはどうあるべきかという、データガバナンスの問題でもあります。
 さらに、上記のようなプロファイリングによる商業的利用の応用例として、プロファイリングによる社会的利用、および政治的利用があります。それぞれ、次のような課題が想定されます。

(1)商業的利用のためのプロファイリング
電子商取引業者がプロファイリングを使ってマーケティングした結果としての消費者の購買行動は、不当な誘引行為によってなされたものであって、法律上有効な、自由な意思決定によるものではないとの主張がされる可能性あり
(2)社会的利用のためのプロファイリング
入社試験や各種資格試験における適性検査において、特定の属性・特徴に基づいて個人を分類し、予測することがバイアスや差別を引き起こす可能性があり。また、行政機関によるプロファイリングについても同様な懸念あり
(3)政治的利用のためのプロファイリング
選挙時に、プロファイリングを使って特定の候補者への有利または不利に働くようなキャンペーンにより不当な世論操作がなされる可能性がある

 データガバナンスについて種々の課題が考えられ得ますが、当研究会では最初のテーマとして「個人データの商業的・社会的・政治的利用におけるプロファイリング技術の実態調査、メリット・デメリット、および適切な活用に向けての課題の整理」を取り上げ、検討します。

主査:松本恒雄  (一橋大学名誉教授・弁護士)
委員:石井 夏生利(中央大学 国際情報学部教授)
   板倉 陽一郎(ひかり総合法律事務所弁護士)
   佐藤一郎  (国立情報学研究所 情報社会相関研究系教授)
   若江雅子  (読売新聞東京本社編集委員)


第1回会合 
2024年7月30日 19:30-21:00
データガバナンスに関連して委員各自の関心事項を発表し、ディスカッションの後、研究テーマを「プロファイリングによる適切な商業的・社会的・政治的利用のあり方」とすることを決定した。次回会合では、プロファイリングが広く活用されているインターネット広告のビジネス実態について、業界関係者からのヒアリングを実施すること、平行してEU法におけるプロファイリング規制内容について調査することが決定された。