日イスラエル中堅・中小企業協業事例
(2020.11.8)
株式会社バルクホールディングス
● 会社沿革
株式会社バルクとして1994年に千葉県佐倉市で創業。当時よりマーケティング・リサーチ・ビジネスを主軸に事業を行ってきた。2007年、商号を株式会社バルクホールディングス(以下、バルクホールディングス)に変更し、持株会社体制に移行した。2018年、石原紀彦氏が代表取締役CEOに就任し、イスラエルのサイバージム・コントロール社(CyberGym Control Ltd.)(以下、サイバージム社)を共同事業パートナーとして、セキュリティ事業に参入する。サイバージム社と共同で株式会社サイバージムジャパン(CYEBRGYM JAPAN Co., Ltd.)を設立し、主に米国および日本・アジアでサイバー攻撃に対応するための実践的な訓練サービスを提供する「サイバージム」の運営やサイバーセキュリティ関連のコンサルティングサービスを提供している。
・イスラエル企業を共同パートナーにサイバーセキュリティ事業に参入
・日・米でサイバーセキュリティ研修プログラムを提供する「サイバージム」を運営
・セキュリティ人材の育成に現地セキュリティ専門家を活用
● イスラエル企業との共同事業
共同事業パートナーであるサイバージム社は、2013年にイスラエル電力公社とサイバーコントロール社(Cyber Control Ltd.)の共同事業として設立された。イスラエル電力公社は、イスラエル国内の発電、送電及び配電事業を行う99.85%政府保有のイスラエル唯一の電力公社である。イスラエル国防省情報セキュリティ部門の経験者や実践での経験値を積んだサイバーセキュリティのスペシャリストが集うサイバージム社と協働することで、国家にとって非常に重要な電力インフラを外部からの攻撃から守っている。イスラエル電力公社における外部からのサイバー攻撃に関する現状は、年間2億回以上であり、月に1000~3000件の攻撃が防御できずに侵入し、対応している。サイバー攻撃から重要インフラを守ることができる背景には、スペシャリストたちの存在だけではなく、イスラエル電力公社では経営層から一般社員まで全社員がサイバーセキュリティのトレーニングを受けていることが大きいという。サイバージム社が実施するトレーニングにより、例えサイバー攻撃を防御できず侵入した場合にも、必要な対応が迅速にできるよう訓練されている。
石原紀彦 代表取締役CEO(中央右)と
早稲田大学イノベーション・ファイナンス国際研究所 樋原伸彦所長(中央左)
バルクホールディングス代表取締役CEOの石原氏は、2016年頃に日本のサイバーセキュリティに関する危機感を抱える中、米国のユダヤ人コミュニティを介してイスラエル電力公社関係者と出会い、サイバージム社との共同事業へと動き出した。両社は、2018年から日本及び米国でトレーニング施設「アリーナ」を共同開設し、実践的なサイバーセキュリティ研修の提供をしている。
同社のサイバーセキュリティ事業は、サイバー防御の成功の鍵は人であり、その人を育成することが重要であるという考えが根本にある。実践経験の少ないエンジニアに対してハッカーからのサイバー攻撃に対応できる能力をトレーニングするだけではなく、経営課題としてのサイバーセキュリティへの対応の必要性にも着目し、一般社員向けから経営陣向けなど幅広い研修プログラムが用意されている。日本では、現在官公庁・大手企業を含め、約350社の顧客に対してトレーニングの提供をしている。2020年3月期連結決算では、セキュリティ事業の売上高は5億200万円(前期比+2億700万円、+70.5%)と飛躍的な伸びを見せており、東京2020オリンピックの開催に向けて、国内では一層サイバーセキュリティの重要性に注目が集まっている。
日本のエンジニアは、能力自体は非常に高いものの、圧倒的に実戦経験が足りないと言われている。同社のプログラムは、一部をイスラエルのチームが直接担当することで、日本にいながらにして世界水準のサイバー攻撃を体験でき、ハッキングされると何が起きるのか、どうやって復旧させるのかを実践的に学べることを特徴としている。
CYBERGYM赤坂トレーニングアリーナの様子
● イスラエルならではの強みと協業のメリット
世界的にみてイスラエルがサイバーセキュリティを強みとするのは、周囲を敵対する国々に囲まれ、国家としてこの分野に取り組んできた歴史に端を発する。そして全国民に兵役義務があり、軍の出身部隊を通じてチームとしての繋がりが非常に強い。そうした強固な結びつきをもとに、軍事開発された技術やノウハウの民間転用を進めることで、国家の発展につなげている。こうした背景に加え、「立てたプランや目標を実践・実行する力を持った優秀な人材、タスクフォースが豊富なこともイスラエルの特徴だ」と石原氏は語る。
イスラエルのサイバーセキュリティのレベルの高さに着目しサイバージム社との共同事業を試みる日本企業が他にもいた中、バルクホールディングスがパートナーとして選ばれた理由は主にふたつある。ひとつは決断・行動の速さ、もうひとつは「オープンさ」である。「イスラエルのいいところは、⽇本の企業が⼤企業かスタートアップなのかに関わらず、ビジネス上のメリットがあると考えれば、きちんと向き合ってくれるところではないか」と石原CEOは語る。イスラエル企業はビジネスでの決断のスピード感を大事にするだけではなく、事業パートナーと技術・情報を共有することでお互いの価値を高めたいと考えていることが多い。ただイスラエルのサイバーセキュリティ技術を日本に持ってくるのではなく、自社がどんな技術や情報を持っているかをオープンに共有し、協働することによって生まれる価値があるかということを重視している。
バルクホールディングスは、サイバージム社にも出資を行うことで、共同パートナーとしての関係をより強固なものにしている。また、イスラエル企業と良好なパートナーシップを継続するためには、個人対個人のパーソナルな信頼関係の構築が求められる。「プロジェクト・オーナーシップ」を持って、イスラエル企業と真摯に向き合い関係を構築することが、協業成功への大きな鍵と言えるだろう。
会社情報
会社名 |
株式会社バルクホールディングス |
代表取締役CEO |
石原 紀彦 |
設立 |
1994年9月27日 |
資本金 |
8億2518万円(2020年6月現在) |
従業員数 |
56名(2020年6月末日現在) |
住所 |
〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町二丁目2番6号 朝日生命須長ビル |
電話番号 |
03-5649-2500 |
Website |
編集: (一財)国際経済連携推進センター
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