日イスラエル中堅・中小企業協業事例【2020/11/8】

日イスラエル中堅・中小企業協業事例
(2020.11.8)


総論早稲田大学イノベーション・ファイナンス国際研究所 所長 樋原伸彦


 日本のスタートアップ・中堅企業によるイスラエル企業との協業の実例について10社の例を取り上げる。セクター別の内訳では、サイバーセキュリティー分野が3社、製薬1社、アグリテック1社、デジタルヘルス1社、モビリティー1社、スマートファクトリー1社、マーケティング1社、音声認識1社、となっている。
 
• 分析

1) もともと、それなりに海外との付き合いがあった企業が多い。特に、米国の会社との提携あるいは取引があり、そこから、ひとつの選択肢としてイスラエル企業との協業が始まった例が多い。イスラエル人との個人的なつながりが協業開始の契機となっている場合もある。

2) 協業の対象となる技術が最初から特定されていた(技術特定型)か、あるいは最初は特定されておらず自社に合うイスラエルの技術を新たに発見しようとしている(イスラエル First 型)か、の次元と、上記の協業の開始の契機を、「個人型」「組織型」の次元、のふたつの次元で、10社を以下のようにマッピング(試行版)を行ってみた。

マッピング
出所:筆者作成

 上記のマッピングから、「技術特定型の協業は組織としてスタートが可能」な一方、「協業したい技術が当初から特定されていないイスラエル First型の協業は、イスラエルに何らかのコネクションがある個人が牽引」という傾向がある。(つまり、マップ上、右肩上がりのリニアな関係が読み取れる。)

3) イスラエル企業との協業に困難を感じている企業は意外と少なかった。今回の取材対象がスタートアップ、中堅・中小企業であったことから考えると、日本の大企業の組織ルールを満たそうとした場合に、イスラエル企業との協業をむやみに難しくしている可能性が高い。

4) 上記と関連するが、イスラエルに限らないが、海外企業との協業の成功は、個人対個人の信頼関係を構築できるかにかかっている。その意味で、大企業の担当は組織人としてイスラエル企業に接する場合が多く、今回取材したスタートアップ、中堅中小企業の方が、個人としてイスラエル企業と接し、信頼を勝ち得ている場合が多いように感じられる。

5) ロシアなどの発展途上国の企業との付き合いに比べると、理由もわからずビジネス方針の変更が起こるようなリスクはイスラエル企業との協業では少ないという指摘もインタビュー対象企業からあった。

6) 以上から、個人ベースでの信頼関係が構築できれば、イスラエル企業との協業では欧米諸国あるいは発展途上国との協業に比べ、相対的に対等な(フェアな)関係を構築できる可能性はあり得ると思量する。

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